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なぜ会社に「ぬくもり」が必要? 私たちの経営理念について。
長坂養蜂場にとって、経営理念はとてもとても大切なものです。
「ぬくもりある会社をつくりましょう 〜強く 優しく 逞しく〜 」。これが長坂養蜂場の経営理念です。経営理念は、会社の目指す目的地を示すもの、一緒に歩くスタッフが全員で共有するものです。私たちはいま、「ぬくもりある会社」を目指して歩いています。
誰かから思いやりを受けた時に心がぽっと温かくなる、それが「ぬくもり」です。大きなことではなく、ちょっとしたこと。自分のことを見てくれている、自分のために行動してくれている、そんな人が側にいることに、人は幸せを感じるし、頑張れるのだと思います。だからこそ、お互いを思いやり、成長を助け合い、困っている時にはそっと手を差し伸べ、嬉しいことは分かち合う、そんな会社でありたいと思います。そして、会社を「ぬくもり」で満たし、お客様や地域にも波紋のように「ぬくもり」を伝えていきたいと願っています。
もしかしたら、「ぬくもり」は大人になるにつれて忘れてしまうものかもしれません。絵本の中の言葉だと言う人がいるかもしれません。でも、私たちは「ぬくもり」には大きなパワーがあると信じています。そんな会社をあなたはどう思いますか?
経営理念が生まれる前の、
ちょっと恥ずかしい話。
現在の長坂養蜂場は、長男の私が三代目社長を、弟が専務を務める兄弟経営です。でも、実は2人とも家業を継ぐことは考えていませんでした。現在の店舗がオープンした頃、母が体調を崩したことをきっかけに、まず弟が家に戻り、1年遅れて私が戻りました。それから約2年半、同業の大手企業で修行をさせてもらいました。そこでは養蜂や製造のほか、商品開発やマーケティングなど多くのことを学びました。修行を終えて長坂養蜂場に戻ると、学んだことをあれもこれも形にしたいと意気込んで、次々に新しいことに取り組みました。お客様第一主義を掲げて、商品も接客も高いレベルを目指した結果、売上は右肩上がり。でも、その一方で社内は疲弊して雰囲気も悪くなっていきました。従業員にもかなり無理をさせていたのです。このままではいけない、何かを変えなければと思っている頃、「日本でいちばん大切にしたい会社」の著書である坂本光司先生の講演で、「一番大切なものは従業員とその家族」というお話を聞いて、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けました。そこで初めて自分が間違っていたことに気づいたんです。すぐに経営理念の作り直しに取り組みました。今後、誰のために、何のために経営をしていくのかを明確にしたいと思ったんです。2010年のことです。役員による話し合いは、なかなかまとまりませんでしたが、「道徳」というキーワードが浮かんだ瞬間にすっと皆の方向性が合いました。もともと祖父の代から、道徳と経営を一体にしたような風土がありました。自分よりも人のため、利益が出たら寄付をする。そんな初代の人柄、長坂養蜂場の原点に戻ることにしました。そして誕生したのが現在の企業理念です。この理念に沿って経営をしていくために、私はまず弟に謝ることから始めました。兄弟で意見をぶつけ合って会社を良くしていこうと言いながらも、最後には自分の意見を通していたことに気づいたからです。弟は言いたいことも言えず、自分の思いを押し殺すようになっていました。そのことを謝り、自分は変わろうとしていること、誰よりも弟と一緒に仕事をしていきたいことを伝えました。この理念のもとで、兄弟、そして家族が固まり、それが従業員にも伝わり社風は大きく変わりました。遠くへ飛んで行ってしまった「ぬくもり」が、再び長坂養蜂場に戻ってきました。

